米国に本社を置くグローバル市場調査とアドバイザリーを提供するコンサルティング企業、フロスト&サリバンは、今年11月にエジプトで開催されたCOP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)に先立ち、「世界初の水素ホテル」として先駆的な取り組みをする川崎キングスカイフロント東急REIホテルとサステナビリティ分野におけるパートナーシップ提携を進めてきました。

このパートナーシップ提携のキックオフイベントとして、10月26日(水)、カンファレンス「サステナブル・イノベーション:ネットゼロの未来へつなぐ」が、川崎キングスカイフロント東急REIホテルの「ビジネスラウンジ」で開催されました。クリーンエネルギーとしての水素エネルギーを取り上げ、自治体および業界を代表するスピーカーにより、川崎市キングスカイフロントを起点とするホテル周辺地域の取り組みをはじめさまざまなサステナビリティ事例の発表がありました。



「サステナブル・イノベーション:ネットゼロの未来へつなぐ」
低炭素な水素エネルギーの展望と川崎キングスカイフロント東急REIホテルのサステナブルな取り組み

最初の登壇者は、主催社フロスト&サリバン、エネルギー&環境部門コンサルタントであるエミリー・ジョーンズ氏。「未来のエネルギー・エコシステム:サーキュラーCCUSの可能性とは?」と題し、水素エネルギーのグローバルトレンド、二酸化炭素回収(CCUS)のグローバルトレンド、さらに二酸化炭素回収(CCUS)と水素インフラ発展の連携について講演しました。

続いて、川崎キングスカイフロント東急REIホテル販売促進課の黒崎 竜男氏が登壇。「世界初の水素ホテルが行う環境保全の取り組み」をテーマに、サステナビリティを具現化する取り組みについて発表しました。

「世界初の水素ホテル」という名のゆえんともなった水素利用の電力については、2018年の開業時より環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」に参画し、使用済みプラスチックから生まれた水素エネルギーの発電によりホテル内の約30%の電力を賄ってきました。残り70%はホテルから出た食品廃棄物によるバイオガス発電によるものです。廃プラスチックが原料の水素であること、さらに地下のパイプラインで供給され低炭素化を実現したことにより「世界初」と呼ばれる水素ホテルが誕生しました。2022年3月31日の実証事業終了後も、移行期間を経て2023年1月から再び水素発電を継続する予定です。

水素発電を目に見える形にする試みが「レタス栽培」。ホテル内の栽培スペースで、水素電力のLED照明による高速栽培法でレタスを育てています。廃プラスチックから無農薬・ストレスフリーでおいしく生まれ変わったレタスは、金曜に収穫され、土曜の朝食に提供されています。



自治体と企業が一体となった、水素エネルギーの今とこれから

東急REIホテルに水素を提供してきた昭和電工株式会社からは、基礎化学品事業部プラスチックケミカルリサイクル推進室長 栗山 常吉氏がスピーカーとして、「皆様と一緒に作るプラスチック循環によるブルーの輪」と題して講演を行いました。主として家庭から出る包装容器を回収して、水素やアンモニアなどの製造を行うことで、地域循環型の事業活動を行っています。

当ホテルのある川崎市も臨海部国際戦略本部成長戦略推進部カーボンニュートラル推進担当課長 篠原 顕氏が登壇し、「川崎市の水素戦略、それに続く臨海部のカーボンニュートラルに向けた取り組み」と題して、川崎臨海部のポテンシャルと自治体としての取り組みを紹介しました。川崎臨海部では、かねてより旺盛に水素事業が行われており、全国の1/10にあたる水素事業がこのエリアに集中。2022年3月には川崎カーボンニュートラルコンビナート構想を打ち立て、日本のカーボンニュートラル化を牽引するモデル地区を形成していく展望を語りました。

最後に、横河電機株式会社 未来共創イニシアチブプロジェクトリーダー玉木 伸之氏が、未来を支える人材育成について講演。将来起こるかも知れない複数のシナリオを描いた上で対処法を導き出す「シナリオプランニング」を通じた育成手法を発表しました。ネットゼロ社会の実現に向けて、「俯瞰的な視点と組織・業界・世代を超えた連携が必要であり、未来シナリオをもとに、共感する仲間との対話を通して共創をリードしていきたい」と抱負を語りました。

世界初の水素ホテルで開かれたイベントは、自治体と企業がひとつになって未来の水素エネルギー社会を創り出す、有意義なキックオフとなりました。



サステナビリティのイベントにふさわしい、川崎キングスカイフロント東急REIホテルコワーキングスペース「ビジネスラウンジ」

持続可能な未来に向けた最先端の取組みを語り合う舞台となったのは、多摩川対岸に羽田空港を望み、世界最高水準の研究開発から新産業を創出するオープンイノベーション拠点キングスカイフロントに建つ川崎キングスカイフロント東急REIホテル。多摩川スカイブリッジの利用により、羽田空港国際線の第3ターミナルまで車で5分というエアポートホテルとしての利便性も高いホテルです。また、水素発電やバイオフードリサイクルの実施のほか、ホテル内でのペットボトル不使用、米の籾殻など植物由来の素材のアメニティを使用するなど環境保全に取り組むサステナブルなホテルです。



カンファレンスが行われた1階に広がる「ビジネスラウンジ」は、ウェアハウスを思わせるデザインの広々とした空間。普段は約85席のコワーキングスペースとして、ビジネスパーソンやクリエイターが仕事に取り組み、カンファレンスやイベントにも広く利用されています。